ペット

第4回 老犬・老猫のための家:介護とバリアフリー設計

記事を書いた人

  1. 都心で住まいの設計事務所を主宰して三十数年
  2. ここだけの話、噛みつかれたことがあり、実は犬が苦手
  3. 最近、友人がペットロスで項垂れている

第1章:導入と「人生100年時代」のペット版

この連載で、私たちは都市におけるペットの「適応」を考察してきました。
最終回は、最も深刻でありながら、最も愛情が問われるテーマ、ペットの高齢化と、それに伴う住環境の設計について考えます。

医療の進化により、犬も猫も長寿化が進み、飼い主はかつてないほど長く、そして深く彼らの「介護」に向き合うことになりました。
これは、人間界の「人生100年時代」が、そのままペット界にも波及した社会問題です。
家づくりの専門家として、高齢のペットにとって安全で快適な家とはどうあるべきか、そのバリアフリー設計を提案します。

第2章:ペットの身体に優しい「バリアフリー」設計

老犬や老猫が抱える最大の危険は、「転倒」による骨折や関節炎の悪化です。
特に都心の集合住宅で一般的なフローリングは、彼らにとって氷上を歩くようなものです。

建築家が設計するバリアフリーの基本は、「摩擦抵抗の確保」「段差の解消」です。
滑りにくいクッションフロアや、表面に加工を施したペット専用の床材へのリフォームは、単なる模様替えではなく、ペットの命を守る投資です。

また、数センチの段差でも、足腰の弱った老犬には大きな負担となります。
階段だけでなく、部屋と部屋の境にあるわずかな段差もスロープ化すべきです。
介護スペースは、水拭きや消毒がしやすい素材にし、日光や風通しを考慮した場所に配置することで、ペットの快適さと飼い主の負担軽減を両立させることが、設計の鍵となります。

第3章:進化する都市型ペット医療の「場所」の考察


高齢のペットは、頻繁な通院や専門的な治療が必要となります。
都市部のペットオーナーは、地方に比べて高度な医療へのアクセスが容易であるという大きなメリットがあります。
24時間体制の救急動物病院や、専門医の存在はその典型です。

しかし、その「場所」へのアクセス性こそが問題です。
弱ったペットを連れての長時間の移動、特に都心の混雑した電車や車での移動は、ペットと飼い主双方にとって大きなストレスです。
この課題を解決する手段として、近年、往診サービス訪問介護が進化しています。

これは、ペットの「医療空間」を病院から「自宅」へ移行させるという、新たな設計思想です。
家づくりの専門家として、私は自宅内に獣医師を迎えやすい衛生的な空間(土間、外部とのアクセスが良い場所)を設計することが、これからの時代、重要になると考えます。

第4章:建築家として提言する「新しいペット共生社会」

この連載を通じて、都市生活におけるペットの適応は、私たち人間の「環境の設計」にかかっていることをお伝えしてきました。

最終的に、ペットとの共存は、自宅の設計を超え、社会全体の設計へと繋がります。
老齢化したペットを抱えながらの災害時避難、高齢者とペットの共倒れを防ぐための地域コミュニティ設計、そして、ペットの終焉後のケアまで。

私たちは、ペットの命の始まりから終わりまで、その安全と尊厳を守る義務があります。
建築家として、今後の都市開発や集合住宅の設計において、ペットのライフステージ全体を見据えた「命のバリアフリー」の概念を取り入れるべきだと提言し、この連載の結びとします。


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